Lesson11-1 代謝 その1

これまでにそれぞれの栄養素が体にどのような効果を与えるかの『結果』は学んできましたが、そこにいたるまでの『過程』についてはまだ詳しく説明していません。

ですのでここからはその『過程』、『代謝』について学んでいきましょう。

糖質の代謝

糖質代謝

炭水化物のページで説明したブドウ糖は植物の光合成、つまり太陽の光エネルギーを用いて二酸化炭素と水から作り上げた栄養素です。穀物類やイモ類がそれをデンプンに変えて実や根に蓄えた物を、人々は食べてエネルギーにしています。

でんぷんは体の中で再度ブドウ糖へと分解され、小腸から吸収されて肝臓へと送られます。

ですが中には肝臓を素通りして血糖になって各組織のエネルギー源になったり、筋肉グリコーゲンとして蓄えられるもの、ただのグリコーゲンとして肝臓に蓄えられるものと、一部別の形で使われる例もあります。さらに肝臓の貯蔵量を上回る余分なブドウ糖は内臓脂肪や皮下脂肪として蓄えられます。

エネルギーの発生

エネルギーへと変換される際、酸素を使う代謝と使わない代謝の2種類があります。

まずは使わない方の代謝、『解糖(かいとう)』について説明します。

ブドウ糖が酵素の働きでピルビン酸へと変化する過程で少量のエネルギーが生み出され、これを『解糖』と呼びます。激しい運動などで酸素が不足した時、この方法が用いられます。

このピルビン酸に特殊な酵素、補酵素A(コエンザイムA)が結合する事でアセチルCoAという物質に変わり、エネルギー産生回路、TCA回路へと入って行きます。この回路で出来上がったクエン酸と呼吸で得た酸素が反応することで、水と大量のエネルギーが発生します。生命活動として行っているのは後者の代謝です。

脂質の代謝

脂質の中でもリン脂質コレステロールはそのまま小腸に吸収されます。ですが中性脂肪はこのままだと吸収されにくいので、十二指腸で混ざり合う胆汁で先に乳化させます。その後、膵液の消化酵素リパーゼによって脂肪酸とグリセロールに分解され、小腸で吸収されます。

ですが吸収されるとすぐに小腸壁で中性脂肪へと戻り、コレステロールやリン脂質と共に「カイロミクロン」というリポタンパク質粒子へと変換します。その後、リンパ管、静脈、心臓、動脈を経て肝臓に運ばれます。

カイロミクロンの再合成

カイロミクロンは肝臓でVLDLというリポタンパク質に再合成されます。

そのVLDLは血液中に出され、脂肪組織に取り込まれて貯蔵されます。そして必要に応じて脂肪酸とグリセロールに分解されてエネルギーになります。取り込まれたVLDLは組織の細胞膜になるコレステロールを運ぶ重要な粒子になりますが、増えすぎると動脈硬化の原因になるので摂りすぎに注意しましょう。

肝臓では他にもHDLも合成され、血液中に出されます。こちらは動脈壁のコレステロールを取り込んで肝臓へと戻って来るので、動脈硬化の予防に一役買ってくれます。