Lesson9-2 摂食行動 食欲調節因子

食欲調節因子

視床下部には摂食中枢や満腹中枢のように摂食行動を刺激する神経性食欲伝達機構だけがあるわけではありません。

他にも化学感受性ニューロンによる体液性伝達機構、脳内アミンや脳内ペプチドによる化学感受性ニューロンの調節、オレキシンなど、様々な要素が含まれて多大な影響を与えます。食欲を調節するこれらの要素は、内因性因子として作用します。

血糖値

前のページで摂食中枢と満腹中枢について説明した際、グルコース(ブドウ糖)が重要な役割を持っていると分かっていただけたことでしょう。これは血糖値にも関連してきます。

通常食後は血糖値が上昇し、時間が経って血糖値が下がって来ると空腹感を覚えます。血糖値の上昇はグルコース濃度の上昇と共にあり、低下も同じように働きます。

ホルモン

血糖調節に関わって来るインスリングルカゴン成長ホルモンなどのホルモンによって食欲は調節されます。これと同様に糖代謝も摂食中枢と満腹中枢の神経系に影響を与えます。

これらの働きによって肝臓で行われるグリコーゲンの合成や分解をスタートさせる酵素の活性化や、長期的な糖新生の制御もホルモンによって行われます。

他にも消化管ホルモンであるコレシストキニン、エネルギー消費や脂肪の貯蔵に関係してくるレプチンなど、細かい種類のホルモンも食欲調節に関わってきます。

血中脂肪酸量

空腹時、皮下や内臓に蓄えられた脂肪を分解して血中の脂肪酸を増やします。すると前のページで説明したように遊離脂肪酸がグルコースの取り込みを妨害して摂食中枢を刺激し、摂食行動を促進させます。

胃の収縮運動

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空腹時にお腹がグーと鳴るのは胃が収縮している健康な状態で、空腹感を促進させます。

胃は空になると収縮しますが、これは副交感神経を介して中枢にもたらされる求心性刺激が原因で現れます。また、肝臓から内臓求心性神経から伝えられる刺激も、過程は違いますが同様の結果をもたらします。

情動

食べる時の気分によっても、食欲は左右されます。

単純に好きな食べ物だったら気持ちが高揚して食欲も促進しますが、嫌いな食べ物だと意気消沈して食欲も下がります。他にも楽しさや明るい気分、悲しみや悩みでも食欲を変化させます。

体温

食物摂取によって消化、エネルギー変換が行われると、熱を発生させて体温を上げます。なのでエネルギーが減ると熱が保てなくなって体温が下り、内部温度受容器から空腹感を発生させます。

夏に暑くて食欲がなくなったり、冬に温かい物を食べたいと思う気持ちはこの機能が一因として含まれます。

その他

これは個人差や体調によって変わってきますが、味覚や嗅覚、視覚など体性感覚が与える影響や、エネルギー要求量、疾病なども食欲に関係してきます。

 

このように、「お腹が空いた」「◯◯を食べたい」という感覚は様々な要因によってもたらされています。そのため、常に体にとって必要な食事を脳が求めるとは限らないので、正しい栄養を摂取するためには注意が必要です。

 

Lesson9確認問題

Lesson9の練習問題に取り組んでみましょう!
知識を確認することで、より定着度が高まります。