ここまでのLessonで、各栄養素の特徴や種類を学んできました。
この章からは、体の働きについて学ぶことで、よりよく栄養を摂取できるようになることを目指していきますので、前に学んだことを思い出しながらしっかり覚えてくださいね。
空腹になったりエネルギーを欲してヒトや動物は食べ物を求めます。この欲求が食欲です。空腹になると食べ始め、満腹になると食べるのを止めるのは自然で生理的な摂食行動なのです。
しかしヒトの場合、その時の気分や仕事量によって摂取量を変えたり、食物の栄養価によって食べる物を変化させていきます。これはヒトが本能ではなく学習によって食べ物を選定する生活習慣の考え方に強く依存しているからです。
このLessonでは摂食行動について、学習していきましょう。
食欲調節の神経機構
まず摂食行動が行われる原因として、空腹・満腹因子というものが働きます。これらがそれぞれ自律神経系、もしくは体液性情報という形で視床下部を中継して行き、高次中枢である大脳皮質連合野の認知調節を受けることで空腹や満腹を感じ取ることが出来ます。
特に人間の場合は大脳皮質における認知性調節の役割が大きいとされています。
健康な状態だと空腹時に摂食中枢を興奮させて摂食を促し、お腹を十分に満たすと今度は満腹中枢を興奮させて摂食を中止させます。視床下部に存在するこの2つの中枢の働きによって摂食行動が調節され、このようにして日々の食事が行われています。
ですが体調不良や精神の疲れ、固定概念などによってこの働きが崩れる可能性があります。
例えば風邪で食欲がなくなったり、ストレスを食べ物で発散させようとして過食してしまったり、好き嫌いや宗教の決まりによって食事の制限が組み込まれたりします。
視床下部の役割
視床下部弓状核には摂食とエネルギー消費に対する拮抗シグナルという物があります。これは満腹中枢に働く摂食抑制の物と、摂食中枢に働く摂食促進系の2つのニューロン群があります。この機能の調節は視床下部室傍核と背内側核という部位で行われています。
空腹や満腹と感じるための因子はホルモンや神経ペプチド、神経伝達物質、栄養素、代謝産物など、多くの要素が明らかになっています。
摂食中枢と満腹中枢
光合成など自身で生存出来るほどの栄養素を作成できないヒトや動物にとって、摂食行動は生命の維持に必要不可欠な行動です。
摂食中枢である視床下部外側野にはグルコース感受性ニューロンという物があり、細胞外液のグルコース濃度低下を感じると食欲を高めてくれます。化学的な面から食欲を促進させようとするのならば、遊離脂肪酸やケトン体などでグルコースの取り込みを阻害して、濃度を下げる方法があります。
摂食中枢に対し、満腹中枢である視床下部腹内側核にはグルコース受容性ニューロンという物があります。こちらはグルコース濃度が高まってグルコースを受け入れると活動を始め、満腹中枢を興奮させて摂食を抑制します。
このように満腹感はこのグルコース濃度によって決まるため、実際に大量に食べたかどうかに関係ないため、早食いなどグルコース濃度が高まる前に食べ物を詰め込んでしまうと、食べ過ぎの原因になったりします。